特別加入制度

労災保険の特別加入制度とは

労災保険は、本来、労働者の業務または通勤による災害に対して保険給付を行う制度ですので、事業主、自営業者、家族従事者など労働者ではない者は、保護の対象とはなりません。しかし、労働者でない者の中には、業務の実態や災害の発生状況などからみて、労働者に準じて保護することがふさわしい者がいます。
また、我が国の法律は属地主義(法律の適用範囲を国内に限定するという考え方)のため、国内の事業から海外に派遣された労働者は、労災保険法の対象とならず、現地の労働災害補償制度の適用を受けることになります。しかし、外国の中には、補償制度の確立していない国もあり、また制度があっても適用範囲や給付内容が十分でない場合があることから、国内の労働者と同様に保護すべき者がいます。
そこで、これらの者に対しても、労災保険制度本来の建前を損なわない範囲で、特別に任意加入することを認め、労災保険による保護を図ることとしたのが労災保険の特別加入制度です。

1.中小企業の特別加入
 特別加入者の範囲
中小事業主等とは、以下の①、②に当たる場合をいいます。
①表1に定める数の労働者を常時使用する事業主(事業主が法人その他の団体であるときは、その代表者
②労働者以外で①の事業主の事業に従事する人(事業主の家族従事者や、中小事業主が法人その他の団体である場合の代表者以外の役員など)
*労働者を通年雇用しない場合であっても、1年間に100日以上労働者を使用している場合には、常時労働者をしているものとして取り扱われます。

        業   種          労働者数  
   金融業、保険業、不動産業、小売業   50人以下
      卸売業、サービス業      100人以下
       上記以外の業種  300人以下

表1:中小事業主等と認められる企業規模
(1つの企業に工場や支店などがいくつかあるときは、それぞれに使用される労働者の数を合計したものになります。)

特別加入の要件
初めて特別加入を申請する場合、次の2つの要件を満たしていることが必要です。
•雇用する労働者について、労災保険の保険関係が成立していること
•労働保険の事務処理を労働保険事務組合に委託していること

特別加入の申請手続
「特別加入申請書(中小事業主等)」 を所轄の労働基準監督署長を経由して労働局長に提出し 、その承認を受けることになります。
なお、この手続については、労働保険事務組合を通じて行うことになります。

2.海外派遣者の特別加入
 特別加入者の範囲
海外派遣者として特別加入することができるのは、以下のいずれかに該当する場合です。
1.日本国内の事業主から、海外で行われる事業に労働者として派遣される人
2.日本国内の事業主から、海外にある中小規模の事業(表1参照)に事業主等(労働者ではない立場)として派遣される人
3.独立行政法人国際協力機構など開発途上地域に対する技術協力の実施の事業(有期事業を除く)を行う団体から派遣されて、開発途上地域で行われている事業に従事する人
*新たに海外に派遣される人に限らす、すでに海外の事業に派遣されている人でも特別加入することができますが、現地採用の場合は、国内の事業からの派遣ではないため、特別加入することはできません。また、単に留学を目的とした派遣についても、海外において事業に従事するものと認められないため、特別加入することはできません。

        業   種          労働者数  
   金融業、保険業、不動産業、小売業   50人以下
      卸売業、サービス業      100人以下
       上記以外の業種  300人以下

表1:中小事業主等と認められる企業規模
※派遣される事業の規模の判断については、事業場ごとではなく、国ごとに企業を単位として判断します。

特別加入の要件
派遣元の団体又は事業主が、日本国内において実施している事業(有期事業を除く)について、労災保険の保険関係が成立していることが必要です。

特別加入の申請手続
派遣元の団体又は事業主が、「特別加入申請書(海外派遣者)」を所轄の労働基準監督署長を経由して労働局長に提出し、その承認を受けることになります。
なお、労働保険事務を委託している場合には、委託先の労働保険事務組合を通じて手続を行うことになります。