パワハラ防止措置を企業に義務付ける法律が成立したとのことですが、どのような対応をしたら良いのでしょうか。
日本労働組合総連合会の「仕事の世界におけるハラスメントに関する実態調査2019」では、職場でハラスメントを受けたことがあると回答した人が37.5%もいたそうです。
内容の上位を見ると、「脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言などの精神的な攻撃」が41.1%、「業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害などの過大な要求」が25.9%、「私的なことに過度に立ち入ることなどの個の侵害」が22.7%とパワーハラスメントに該当しうる行為が多かったようです。
「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(労働施策総合推進法)の改正案、いわゆるパワハラ防止法が可決成立しました。事業主に対して、労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上の措置を義務付けるといった内容で、大企業は2020年4月、中小企業は2年後の2022年4月からとなります。
法施行までに企業として対応すべきポイントを確認してみましょう。
1.就業規則や諸規程の見直し・整備
就業規則や諸規程等整備することが必要となります。すでに就業規則等でパワハラに関する規定を設けている企業も、労働施策総合推進法上の定義と適合しているか確認が必要です。
2.実態の把握
施策を実効性の高いものにするには、アンケートやヒヤリングにより実態を把握することも必要となります。
3.方針の明確化
ケースによって対応や処分に差が出ると不公平なものになってしまいますので、対応方針を明確化する必要があります。
4.社員への周知
「法律で決まったから」ではなく、社員の立場になり、関心と理解を深められるような方法での周知が必要です。
5.役員・管理職研修
パワハラ防止において重要となるのが、役員・管理職に対する研修です。パワハラ防止の経営上・マネジメント上の意味を伝え、関心と理解を深めてもらうことが必要です。
6.一般社員研修
パワハラに当たるケースと当たらないケースを理解してもらうことが必要です。概念を正しく伝えることで、上司の指導や教育に対する理解に繋がります。
7.相談窓口の設置
法律上の措置として、相談窓口の設置が必要となります。相談窓口をしっかり機能させるために形式的に設置するだけではなく、相談しやすい職場環境づくりが必要です。
8.対応マニュアルの整備
様々な相談対応から解決に至るまでのプロセスをマニュアル化しておく必要がありますが、簡単ではありません。専門家の支援を受け、整備すると良いでしょう。
9.情報管理体制の整備
相談窓口で取り扱う内容には、プライバシーに関わる内容のものも多くなります。このような個人情報の管理を厳密に行えるよう、体制の整備が必要となります。
パワハラ防止措置の法制化は、事業主が、労働者に対してパワハラに関する研修の実施や配慮をするだけではなく、労働者も、他の労働者に対する言動に注意を払えるよう、パワハラについて関心や理解を深めることが大切です。教育や指導の過程で暴言と受け取られる発言は、上司と部下との信頼関係が希薄だと、パワハラに該当すると判断されやすいようです。検証の際、過去の人間関係等も考慮する必要はありますが、日頃から上司に相談しやすい環境づくりをしていくことで、信頼関係が築かれ、パワハラ等のない働きやすい職場となるのではないでしょうか。